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所得補償保険・就業不能保険・収入保障保険の違い【医師向け】

「収入保障保険に入っているから、働けなくなっても収入は守られる」——そう思っていませんか。実はこの3つの保険は、名前は似ていても保障する事態がまったく別です。医師・歯科医師の保険相談を専門とするFPが、混同しやすい3つの保険の違いと、医師の場合の考え方を整理します。

まず結論:3つの保険は「何が起きたときに出るか」が違う

最初に、30秒で分かる早見表です。

保険の名前何が起きたときに出るか誰が受け取るか
収入保障保険死亡・所定の高度障害遺族(家族)
就業不能保険病気やケガで長期間働けない本人
所得補償保険病気やケガで働けない間本人

最も多い誤解が、収入保障保険を「働けなくなったときの保険」だと思っているケースです。収入保障保険は死亡保険の一種で、亡くなったとき(または所定の高度障害のとき)に、遺族が毎月の年金形式で保険金を受け取る商品です。名前に「収入」とありますが、生きていて働けない状態は原則として保障の対象外です。

死亡リスクに備える
収入保障保険遺族が年金形式で受け取る
生きて働けないリスクに備える
就業不能保険本人が受け取る(生保)
所得補償保険本人が受け取る(損保)

つまり、「長期入院や療養で収入が止まるリスク」に備えたいなら、収入保障保険ではなく、就業不能保険か所得補償保険を検討することになります。

それぞれの保険を詳しく

収入保障保険とは

収入保障保険とは、被保険者が死亡または所定の高度障害状態になったとき、遺族が保険金を年金形式(毎月〇万円など)で受け取る死亡保険です。

保障の対象は「死亡・所定の高度障害」。働けない状態は原則対象外
一括ではなく毎月受け取る形のため、同じ保障額の定期保険より保険料が抑えられる傾向
経過とともに受取総額が減っていく「逓減型」の設計が一般的

向いている人:自分に万一のことがあったとき、残された家族の生活費を確保したい人。子育て世帯の死亡保障として広く使われています。

就業不能保険とは

就業不能保険とは、病気やケガで長期間働けない状態が続いたとき、本人が毎月給付金を受け取る、主に生命保険会社が取り扱う保険です。

保障の対象は「所定の就業不能状態」。各社が定める状態の定義を満たす必要がある
給付が始まるまでの免責期間(支払対象外期間)が60日・180日など長めに設定される商品が多い
精神疾患による就業不能は、対象外または保障が限定される商品が多い(商品により異なります)

向いている人:長期の療養リスクに月々の給付で備えたい人。ただし「所定の就業不能状態」の定義は商品ごとに差が大きく、加入前の確認が欠かせません。

所得補償保険とは

所得補償保険とは、病気やケガで働けない間の所得の減少を補償する、損害保険会社が取り扱う保険です。

保障の対象は「病気やケガで就業不能の間」。補償月額は所得(年収)に応じて設定する
補償が続く期間(てん補期間)は1年〜2年など短期の商品が中心
長期版として、就業不能が続く限り長期にわたり補償する団体長期障害所得補償保険(GLTD)があります。医師向けには「ドクター長期収入補償保険」のような専用商品も存在します

向いている人:働けない間の収入減少そのものに備えたい人。特に、収入が止まると事業の固定費が重くのしかかる自営業者・開業医と相性の良い仕組みです。

5つの軸で比較する

比較軸収入保障保険就業不能保険所得補償保険
支払事由死亡・所定の高度障害所定の就業不能状態病気・ケガによる就業不能
受取人遺族本人本人
期間の性格保険期間満了まで年金形式商品による(長期向け)てん補期間(短期中心。長期型=GLTD)
取扱会社生命保険会社生命保険会社損害保険会社
精神疾患の扱い—(死亡保障のため対象外の概念)対象外・限定の商品が多い(商品により異なります)商品により異なります

ポイントは、この3つは競合ではなく役割分担だということです。「死亡リスク=収入保障保険」「生きて働けないリスク=就業不能保険・所得補償保険」と、守る対象が違います。だから「どれが一番良いか」ではなく、「自分にとってどのリスクが空白か」から考えるのが正しい順番です。

保険の前に:公的保障を確認する

民間保険で備える前に、すでに持っている公的保障を確認しておくと、必要な保障額を過大にも過小にも見積もらずに済みます。働けないときの公的な柱は2つです。

傷病手当金(健康保険):会社員・勤務医などが病気やケガで働けないとき、給与のおよそ3分の2相当が支給開始から通算1年6ヶ月を上限に支給されます(ただし高収入の場合は上限があります。後述)。国民健康保険には原則この制度がありません。
障害年金(公的年金):傷病が長引き一定の障害状態に該当すると、障害基礎年金(国民年金)・障害厚生年金(厚生年金)が受けられる場合があります。ただし認定には基準があり、就業不能=受給ではありません(該当の可否・金額は個々の状態により異なります)。

つまり公的保障は「短期は傷病手当金、長期の一部は障害年金」という形で存在しますが、傷病手当金の終了から障害年金の認定までの空白や、障害認定に至らないが働けない状態、そして現役収入との差額は残ります。民間の就業不能保険・所得補償保険は、この残った空白を埋めるための道具です。

医師の場合はどう考えるか

勤務医の場合

勤務医(健康保険の被保険者)には、病気やケガで働けないとき傷病手当金という公的な土台があります。給与のおよそ3分の2相当が、支給開始から通算1年6ヶ月を上限に支給されます。

ただし、高収入の医師にはこの「3分の2」がそのまま当てはまりません。傷病手当金は標準報酬月額をもとに計算され、標準報酬月額には上限があるためです。上限を超える収入部分は計算に反映されず、収入が高いほど実際の補償率は下がっていきます。

月収(概算)傷病手当金の目安実収入に対する割合
60万円約40.0万円/月約67%
100万円約66.7万円/月約67%
200万円約92.7万円/月約46%
250万円約92.7万円/月約37%

※協会けんぽ等の健康保険の場合の概算(標準報酬月額の上限適用・賞与は計算に含まれません)。実際の金額は加入する保険者・報酬の内訳により異なります。

つまり勤務医の空白は2つあります。ひとつは金額の空白——高収入であるほど傷病手当金だけでは生活水準を維持できないこと。もうひとつは期間の空白——傷病手当金が終わった後も働けない状態が続いたときです。この2つを埋めるのが就業不能保険や長期型の所得補償保険(GLTD)の役割です。なお、住宅ローンの団体信用生命保険(団信)は死亡時にローンを守る仕組みで、長期就業不能まではカバーしない契約が一般的です(特約の有無により異なります)。死亡保障とは別に、就業不能の備えを確認しておく価値があります。

開業医の場合

開業医(国民健康保険の加入者)には、原則として傷病手当金がありません(医師国保など、組合によって独自の給付がある場合はあります)。さらに、院長が働けない間も家賃・人件費・リース料といった固定費は止まりません

収入がゼロになるだけでなく支出が続く——この二重の打撃が開業医の就業不能リスクの本質です。だからこそ開業医にとって、働けない間の所得を守る保険は、死亡保障より先に検討すべき優先度の高い備えになります。

よくある質問

収入保障保険に入っていれば、働けなくなったときも安心ですか?
いいえ。収入保障保険は死亡・所定の高度障害のときに遺族が受け取る保険で、生きていて働けない状態は原則対象外です。就業不能リスクには、就業不能保険や所得補償保険で別途備える必要があります。
就業不能保険と所得補償保険は、どちらを選ぶべきですか?
どちらも「働けないとき本人が受け取る」点は同じですが、取扱会社(生保/損保)、就業不能状態の定義、免責期間、精神疾患の扱いなどが異なります。ご自身の職業・公的保障・既加入の保険との重なりで判断するのが確実です。迷う場合は両方の設計を比較できる専門家への相談をおすすめします。
医師は傷病手当金があるので、所得補償保険は不要ですか?
勤務医と開業医で答えが分かれます。勤務医には傷病手当金がありますが、支給はおよそ給与の3分の2・通算1年6ヶ月までで、標準報酬月額の上限があるため高収入の医師ほど実際の補償率は3分の2を下回ります。さらにその後の長期就業不能は空白です。開業医には原則として傷病手当金がなく、固定費の支出も続くため、就業不能への備えの優先度はより高くなります。なお、医師国保に独自の給付がある場合でも、支給が入院時に限られる・期間が短いなど限定的なことが多く、健康保険の傷病手当金と同水準ではありません(給付内容は組合により異なります)。
3つとも入る必要はありますか?
必ずしも必要ありません。守る対象が違うため、「家族の生活費(死亡リスク)」と「自分の収入(就業不能リスク)」のどちらに空白があるかを先に確認し、空白のある部分だけを埋めるのが合理的です。すでに団信や勤務先の団体保障がある場合は、重複を避ける調整も重要です。
保険料はどれくらい違いますか?
年齢・職業・補償額・免責期間などで大きく変わるため、一概には言えません。医師・歯科医師の場合、団体割引が適用される専用商品(例:ドクター長期収入補償保険では団体割引30%)もあり、個別の試算で比較するのが確実です(団体・商品により割引率は異なります)。

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